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中村修二氏、受賞決定直後のインタビュー

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 今日は、日経から以下のインタビュー記事を抜粋して紹介します。
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  中村さんは日亜化学に在籍していた時、米国のベンチャー企業に匹敵するようなすごい仕事をされた。なぜ成功できたのでしょうか?
中村 今振り返ると、日亜化学の創業者である小川信雄さんが、まさしくベンチャーキャピタリストだったということでしょう。青色LEDに関しては、私がベンチャーを起こしたようなものです。小川さんが、それに投資してくれた。お金を出すけれども、一切何も言ってこなかった。すべてのリスクを負ってぽんとお金を出してくれた。すごい方でした。

  開発を始めたとき、青色LEDができる確証はあったのですか?
中村 いえ、その時はもうほとんどゼロ。まあ1%ぐらいかな。窒化ガリウムで青色LEDを作ろうと思ったのは、博士号を取るためでした。当時、窒化ガリウムの青色LEDを研究していたのは赤崎先生のグループぐらいで、窒化ガリウムであれば、どんな結果が出ても論文を5件くらい書けたら、博士号が取れると思ったのです。

  今の日本企業の枠組みの中で、中村さんのようなイノベーションを起こそうと思ったら、社内である程度好き勝手をやらせる環境を整えることが大事だということですか?
中村 そうです。私は当時、会社の指示を全部無視していました。でも、普通の企業でそんなことをしたらクビでしょう。私の場合は、小川さんがいてくれたからできた。だから、小川さんが経営に関与できなくなった時、会社を辞める決心をしました。私は企業に勤めてはいましたが、極めて特殊な環境にいた訳です。同じような環境を普通の会社でつくるのは難しいと思います。

  私がベンチャーの必要性を説いてきたのは、そのためです。実際に米国のベンチャーには、私が成果を出した時のような環境があります。ベンチャーキャピタルやエンジェルが投資して、5年ぐらいは自由にやらせてくれるのです。日本にも、このような仕組みを導入しないと、本当に革新的なことはできないと思う。

  新しいものにチャレンジするとゼロからやり直しになるので、必死になって勉強します。すると、自分の能力が伸びる。そういう意味で、同じ会社にずっといたらダメだと思うんです。ベンチャーを5年置きに立ち上げていたら、そのたびに環境が大きく変わります。むしろ、自分の能力を磨くために、5年置きぐらいで会社を替えるべきです。

  日本では、特許の報酬制度が再び議論の的になっています。今までは中村さんの裁判もあって、社員に報いる方向の話が出ていた。ところが、また風向きが変わっています。
中村 そうです。私としてはショックです。私の裁判を通じて、日本の技術者の待遇はいい方向に向かっていると思っていた。それを維持してほしい。そうでないと、日本の技術者はかわいそうですよ。米国に比べれば、日本では人材の流動性が本当に低い。技術者は今のところ、「永遠のサラリーマン」になる以外、選択肢はほとんどないんです。なのに、特許権もすべて企業に帰属するようにするという。

  日本はこのままだと本当にまずいことになる。ここまで伺ったお話を総合するとそう思ってしまいます。
中村 まずいですよ。一番問題なのは英語でしょうね。日本の企業が失敗したのは、うまくグローバリゼーションできなかったからです。代表例が携帯電話や太陽電池です。いいものを作っていたにもかかわらず、グローバリゼーションで後れを取った。政治の場でもそうですし、学会のような研究開発の世界でも全く同じです。展示会や国際会議に行っても、いろいろな外国人と雑談するようなことはしない。

  ご自身は、英語力はどうなんですか?
中村 実はダメなんです。45歳からでは、やはりムリですね。若い頃からやらないと英語はどうしようもないです。今でも英語に苦労しています。

  これまで米国の良さを話されてきましたが、米国にも課題があると思います。それは何だと思いますか?
中村 米国の課題は、ものづくりが苦手なことです。個性を伸ばす教育で、みんな違う人間をつくる。日本はみんな同じような人間を大量につくる教育ですから、グループで品質のいいものを作るのは得意です。米国人は、グループでの仕事が得意ではありません。現在の米国は、ものづくりのほとんどをアジアに委託している。「アジアの中で日本はものづくりが最もうまい」と米国人は思っています。だから、米国人はものづくりに関しては、日本とコンビを組んでやりたいんです。

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