今日は、朝日新聞から以下のコラムを抜粋して紹介します。
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中間選挙が終わった米国では、早くも2016年の次期大統領選挙に関心が集まっている。いま話題の中心にいるのは、やはりヒラリー・クリントン前国務長官だ。
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中間選挙が終わった米国では、早くも2016年の次期大統領選挙に関心が集まっている。いま話題の中心にいるのは、やはりヒラリー・クリントン前国務長官だ。
中間選挙の応援で各地を回った時も、人気と知名度は圧倒的だった。演説会場には、出馬表明もしていないのに、「ヒラリー2016」と書かれたバッジやシャツを売る業者が出没。会場の外では、勝手連的に始まったクリントン氏を応援する政治団体が、本番さながらの立派なバスで乗り付け、ポスターを配っていた。
上院議員や国務長官を歴任し、経験も十分積んだ。「今度こそ初の女性大統領を」という、社会の機運も高まっている。ケンタッキー州での応援演説で、「ガラスの天井にひびを入れましょう」と声を上げたときは、会場の盛り上がりは最高潮に達した。「ガラスの天井」とは、企業における女性の昇進などを妨げる、見えない男女格差の障壁のことだ。
ただ、長い選挙戦では何があるかわからない。クリントン氏は前回の大統領選挙でも民主党候補になるのは確実とみられていたが、急速に広がったオバマ・ブームに、あっという間にのみ込まれた。
クリントン氏以外にも、候補がいないわけではない。大差をつけられているとはいえ、民主党の2番手につけているのがエリザベス・ウォーレン上院議員。ハーバード大学ロースクールの教授時代に、消費者保護のための金融規制を訴えて注目を集め、その勢いで政治家になった。どちらかといえば中道派のクリントン氏に飽き足らない民主党のリベラル派が、主な支持層だ。
一方、共和党は、いまも混戦が続き、誰になるか全く予測できない。その中で注目が高まっているのは、元フロリダ州知事でブッシュ前大統領の弟ジェブ・ブッシュ氏の動向だ。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめている各種世論調査の平均値では、ブッシュ氏の支持率が14%と、頭一つ抜け出している。
ブッシュ家の知名度に加え、父や兄が大統領選挙で培った資金集めのネットワークも強みだ。兄のジョージ・ブッシュ氏と比べると穏健派とされる。妻がメキシコ出身で、本人もスペイン語が堪能というのも、共和党の課題であるヒスパニック系有権者へのアピールにつながる。本人は12月初旬、「大統領選出馬について考えており、近いうちに、どうするか決める」と話している。
クリントン氏とブッシュ氏の戦いになれば、1989年から両家が大統領職を分け合い、例外はオバマ大統領だけという事になる。これではさすがに、アメリカらしくないだろうという声も出ている。一時は反対していたブッシュ氏の母親バーバラ・ブッシュさんも「二つか三つの家族しか大統領選挙に出馬できないとしたら、ばかげたことだ」と口にしたことがあった。
共和党内では、前回の候補だったミット・ロムニー氏の再挑戦に期待する声も根強く、最近のCNNの世論調査では首位につけた。また、ここに来て注目を集めているのが、小児神経外科医のベン・カーソン氏だ。最近まで保守系のニュースチャンネル「フォックス・ニュース」のコメンテーターも務めていた。CNNの調査ではロムニー氏に次ぐ2位につけ、本人も出馬に意欲的とされる。予備選挙を勝ち抜けば、共和党で初めてのアフリカ系大統領候補となる。
米国の大統領選挙は、実質1年以上にわたる、長い戦いだ。その中で、候補者はあらゆる方面から資質をチェックされ、たった一言が命取りになることも珍しくない。主要候補は来年の前半までには立候補表明をする見通しで、長い選挙戦がこれから始まる。